思い出の披露宴 [シゴト]
もう10年以上前になるので、書いてもよいだろうか。
楽しい披露宴はたくさん担当させてもらった。
だけど、どうしてもどうしても忘れられない、苦い披露宴…
事実そのままを書くのはまずいので、
若干フィクションが含まれていることを予めご了承くださいませ。
どのへんがフィクションなのかはご想像にお任せします。
このシゴトについて、2年目だったワタシ。
担当させていただいたカップルは
新婦→ワタシと同じ年。意志の強そうなはっきりした方。
新郎→10歳ほど上、とても穏やかで、のんびりした方。
このふたり、出会いはお見合い。
新郎は母ひとり、子ひとり。なかなか結婚しない新郎を心配し、
お母様がつてをたどってお見合いに至ったという話。
そして、新郎のお母様が新婦を大変気に入って
とんとん拍子に話が進んだとのこと。
打ち合わせの時に新郎のお母様が同席されることも多く
新郎のお母様と新婦が楽しそうに色々決めていた横で
何も言わず穏やかに微笑んでいる新郎が印象的だった。
さて、当日。
新郎が来ない。
着付けのために先に来ていた新郎のお母様が電話をかけるも、出ず。
新郎のご自宅は会場から10分ほどのところだったので
親戚の方に様子を見に行ってもらうことになった。
「家で寝てたよ」
そう親戚の方から連絡があり、一同、ホッ。
起こして連れてきてもらう。
緊張しちゃってようやく朝方になって眠れたって感じかなぁ…
と思いながら、新郎を迎える。
あれ…なんか、よろよろしてない?まだ寝ぼけてるの?
「おはようございます!」
声をかけても、遠い目をしている新郎。
う…酒臭い。
二日酔いレベルじゃない。さっきまで飲んでたと想像される酒臭さ。
うっそ、大丈夫?
かなり不安になるが、時間がない。
とにかく支度に入ってもらい、何とか少しの遅れで挙式にこぎつけた。
ふたりの式は神前式。新婦はきりっとした表情をしてる。
相変わらずの千鳥足の新郎を式場の入口で見送った。
挙式は…散々だったそうだ。(ワタシは中に入らないので、聞いた話)
新郎がまっすぐ立っていられない。
新郎新婦の前にある台にもたれかかり、倒す。
三献の儀(三々九度)も、指輪交換も、誓詞奏上も、玉串奉奠も、
ひとつとしてまともにできない。
媒酌人の手を借りて何とかやり遂げたけれど、親族の間には寒ーい空気が。
この状態で披露宴をしてもいいものだろうか?
挙式後、ご両家の親御様、ご媒酌人と相談して
新郎は体調がすぐれないということにし、しばらく控室で休んでもらい、
新婦のみで披露宴をスタートすることになった。
新婦にお伝えすると
「あれじゃ無理ですよね。大丈夫です、ひとりで」
前を向いたまま、きりっとした表情を崩さずに答える。
披露宴が始まった。
新郎の勤務先の方も大勢見えている。
新郎のお母様は末席でひとまわり小さくなってしまったように見えた…
食事が始まったのを確認して、控室の様子を見に行く。
ソファで横になっている新郎。寝ているよう。
氷水とおしぼりを置いて、控室を出た。
ちょうどそこへ電話が入り、事務所に戻る。
電話が終わった時に、音響担当の男の子がやってきた。
「今、廊下を和服の男の人が歩いてましたよ。ふらふらしてましたけど…」
えええええええええっ!!!
「どっち行った?トイレ?」
「いや、裏階段の方に向かってました。だから、変だなと思って」
慌てて控室に戻ると、羽織と草履を残して、新郎がいない。
会場には表と裏に入口があり、どちらもお客様が使用できるようになっている。
新郎は裏へ向かったという。
「とりあえず、追いかけてっ!携帯持って、途中経過報告してね!」
結局。
新郎は戻ってこなかった。
追いかけていた男の子が声をかけたら、
さっきまでの千鳥足がうそのようにダッシュで逃げたらしい。
その後、自宅へ向かう途中にある警察署の駐輪場で
袴を脱いでいるところを発見したと連絡があったが
新郎のお母様に「もう、放っておいてください」と強く言われ、
自宅へ戻るのを確認したところで、追跡をやめることにした。
このことは、親御様とご媒酌人には伝えたが、
お開きまで新婦には知らせなかった。
新婦は、ひとりで披露宴すべてをやり遂げた…
きりっとした表情を、ずっと保ちながら。
お引上げ(お帰り支度)中の新婦に
披露宴中の出来事を伝えた。
新婦のご両親、ご媒酌人と一緒に。
「…わかりました」
取り乱すこともなく、涙を見せることもなく、
きりっと前を向いて一言だけ言った。
***
後日、やはり破談になったと連絡があった。
当日撮ったビデオのマスターテープや写真のネガを
ご両家の親御様立会いの下で処分した。
新郎のお母様は、ずっとうつむいたままだった。
実は、新郎は新婦のことが好きになれなかったのだそうだ。
のんびりした新郎は、はっきりした新婦がむしろ苦手なタイプだったと。
でも、大好きなお母様が気に入った相手だから、結婚しようと決めた。
結婚式の話をするお母様が本当に楽しそうで、
言いだせないまま、どんどん日が経ってしまったという。
結婚してしまえば何とかなるという思いもあったのだろう。
だけど、どうしてもやりきれず、
酒の勢いを借りて結婚式に臨もうとしたらしい。
その結果、新郎新婦ともに傷つき、
大好きなお母様にも悲しい思いをさせることになってしまった。
こんな時に、ワタシたちには何もできないのかもしれない。
何かできると思うのは、相当な思い上がりに違いない。
それでも、何かしらのサインはあったのだと思う。
サインに気付けなかったことが本当に本当に悔やまれる。
ノリノリでどんどん決めていく新婦&新郎のお母様にばかり気遣って、
新郎のことをないがしろにしていたのは、ワタシなのだ。
新郎に意見を求めることすらしなかった…
すべてのカップルと本音トークができるわけではないとわかってるけど。
「心配」「不安」を取り除くのもワタシの役目なのだと
いつも自分に言い聞かせて、シゴトをしたい。
トラックバック 1
マイミク(mixiのおともだち)さんの日記に「ブライダル課の学生さんたちの発表会を見に行った」とありました。学生さんたちが考える、テーマのある人前式&ファッションショー。とても興味あります。機会があれば拝見したい!面白そう!目からうろこの内容もあるに違いないと思います。ブライダルの知識を…[続く]










それは辛かったですね・・・
この仕事をしていると『ホントは???』と予感がしてしまう場合も多少はありますが私も過去に一度だけ当日を快く迎える事が出来なかった時があります。
お二人の新居と私の家が近くて「両親への手紙を見てもらいたいのですが・・・」と相談を受け、喜んで出掛けたにもかかわらず・・・
まず、見せていただいたのは普通の披露宴で読まれているようなお手紙でした。
しかし、その後に「これは披露宴用で本当に渡すのはこっちなんです。」
と見せていただいたお手紙にはとても内容は書けませんが当日、かなりブルーな気持ちで臨んだことは今でも忘れません。
あの手紙を私に見せた時、私にやめてもいいんだよ?って言って欲しかったのかなぁとすっごく悩んだ披露宴でした。。。
みんな幸せな気持ちで披露宴を迎えて欲しいと願いたいです。
by まりもっこり (2007-06-28 00:01)
僕の親友も披露宴で酔い潰れ、顔のよく似た3つ下の弟が、式の後半新郎の代役を務めあげたということがあります。彼の場合今でも夫婦仲良くやっています。
カミさんの友人は、やはり親が気に入って結婚させられたということがありましたが、今ではしっかり僕の友人の奥さんになりました。そんなもんですよね。
by eddie (2007-06-28 00:16)
今なら気付けるでしょうか?
気付いたらどうするでしょうか?
色々と難しい内容だと思います。
一部作ってあるとはいえ、目に浮かぶような文章ですね。
何となく言い出せなかった新郎の気持ちも少し分かります。
全ての事に対して責任を取ろうとする母親の姿が目に浮かびます。
育てた結果であるかの様に見られる母親と、母のためにと思っていたことが逆に深い溝を付くってしまった息子が、この後仲良くやって行けたのかどうかが一番気になるところでもあります。
勿論、新婦さんが一番の被害者ですが。
見合いとはいえ、どうして結婚したいと思ったのか。。。。疑問です。
by moonrabbit (2007-06-28 08:04)
お久しぶりです。
仕事に対するJOHNさんの真摯な態度が胸を打ちました。
結婚は個人的な事情によるものだから、部外者にはどうしても立ち入れない領域があります。
今のJOHNさんなら、きっと気付いたでしょうが、それでも結論を出すのはJOHNさんではありませんので、難しいところです。
新郎の母と新婦が似たようなタイプに見えました。
新郎は本当は母親から逃げ出したかったのかも知れませんね。
by 柴犬陸 (2007-06-28 09:28)
とても引き込まれる話でした。そして、自分に置き換えて考えてみました。
建築における一連のプロセスでも同じことが起こりうります。
夫であれ妻であれ、打合せ参加者の誰かが口数が少ない場合は、とても
気になりますね。
自分の気持ちを抑えていないか?と。
そうなると、あとで「私が欲しかった家はこんなんじゃない!」「本当はこう
したかった!」と言うことがあり得るからです。
今一度肝に銘じて行きたいと思いました。
by 浜松自宅カフェ (2007-06-28 09:34)
素晴しい考えと意思を持ってるんだなと読んでて関心しました。式の事は残念でしたがJOHNさんの「何かできると思うのは、相当な思い上がりに違いない」の言葉にグッと来るものがありました。
とある方から教えて頂いた内容ですが「助けたい、解決させてあげたい」とかの気持ちってとっても素敵な事、でも貴方はいったい何様ですか?人の人生を左右させる程偉い方なんですか?辛く苦しい事でも人様の人生、自分が出来る事は相手の心を和らげる、少しでも気持ちが楽になってくれればと、その程度で良いのです。と・・・私はその言葉をきいてハッと考えさせられました。
今式準備でお世話になってるプランナーさんは新人さんみたいでとっても頼りない感じなんですが、JOHNさんみたいに素晴しい方も居るんだなと思うと、どんなにベテランな人でも最初は新人さん、頑張ってねと言う気持ちになりました♪
by rindiary (2007-06-28 10:21)
この話、初めて聞いた時・・・なんともいえない気分だったし
驚きました。
確かにこういう時、私達が何かできると思うのは、JOHNさん
の言うとおり、思い上がりなのかもしれないけど・・・
サインね・・・それ大事ですよね・・・
でも、今の私だったら、サインに気がついたところで、何を
どうしたらいいか思いつかないだろうな・・・
新郎が母を思う気持ちが・・・。( ´Д⊂ヽウェェェン
結果は破談になってしまったけど、新婦にも新郎にもそして母にも
必要な経験だったのかな・・・。悲しいけど・・・。
by 優子 (2007-06-28 17:39)
ああ、痛い…。
辛いだろうと思います。両方とも。両家とも。すべてが。
新郎のお母様を喜ばせたい優しさはわかる。
でも、優しいだけじゃ駄目なんだよね。
この場合は大きな出来事になってしまったけど、きっと披露宴後一年以内に離婚しているカップルはたーーーーくさんいるんだろう。と思いませんか?
by kotobuki (2007-06-28 18:39)
うーん、新郎さんが何も言わずに微笑んでいただけ…という点が
唯一のサインだったのかもしれませんね。
結婚式を挙げるという時点で、うまく行っているという先入観が
生まれてしまうのも事実でしょう。
どこまで、プライベートに立ち入るかという線引きも難しいと思います。
こういった経験があることで、スタッフも成長していくのでしょうね。
by ひろ茶 (2007-06-29 01:34)
♪まりもっこりさん
まりもっこりさんの思い出もかなりへヴィですね。
内容がわかりませんが、新婦は聞いてほしかっただけだと思います。
こんな気持ちでいるんだよ、って誰かに知っていてほしかったのでは
ないでしょうか。きっとまりもっこりさんに言ったことで
少しだけ楽になったに違いない。…と思いたいです。
♪eddieさん
披露宴内で酔いつぶれてしまうことはときどき見かけますが
代役が立ったのは見たことないです!すごい!
周りの人は気付かなかったのですか???
結婚相手を親に気に入ってもらうのは大切だと思います。
でも、その前に自分の気持ちありきなんですよね…
♪moonrabbitさん
もしかしたら、気付けるかもしれません。
はっきりわからなくても「大丈夫かな?」って思うくらいは。
でも、気付いても何もしないと思います。
いや、何もできないと思います。わかってるんですけどね。
その後、新婦とは偶然駅で会いまして。元気そうで安心しました。
結婚したいと思った理由、想像でしかありませんが…
当時、新婦の年齢が29歳だったんですよね…
30歳前に、って思ったのかなーなんて。
by JOHN (2007-06-29 02:19)
♪柴犬陸さん
お久しぶりです。ご訪問ありがとうございます。
もっと新郎の話を聞く努力をすれば良かった…
と苦い思いが残っています。結果は同じだとしても。
振り返ってみると、ホントに新郎とお話ししてないんです。
お母様と新婦はめちゃめちゃ気が合って、とても仲良しでした。
柴犬陸さんのおっしゃるように、新郎は心の奥では
お母様も苦手に思っていたのかもしれませんね。
難しいです。
♪浜自カフェさん
常にニュートラルな状態で、気持ちをクリアにして
お客様とお話ししなくちゃいかんなと思います。
新郎の存在、私の中ではないも同然でしたから…(ヒドイ)。
完璧にはいかないけれど、そういう気持ちを忘れずに
シゴトしたいです。まだまだ修行が足りません。
♪りんさん
ワタシもその方の言葉を心に刻んでおきます。
プランナーさん、新人さんなんですか?
それはラッキーと思ってください。
ちゃんとした会場ならばトレーナーが付いているはずですし、
新人じゃないと気が付けないこともあります。
何より一生懸命にやってくれます!
※一生懸命さが伝わってこない場合は、考えた方がいいかも(笑)
頑張ってくださいね。
もし、何か心配なことがあればどうぞお気軽にご相談くださいませ^^
by JOHN (2007-06-29 02:35)
♪ゆうこりん
そう、気付いたところで何もできないし…
しちゃいけないんだと思います。お客様が望まない限りは。
ただ、自分自身の心構え?として
「大丈夫かな?」と思いながら当日を迎えるのと
全く気付かずに当日を迎えるのはやっぱり違うはず。
式場から逃げるなんて想像はできなくても、
控室を誰かに見ていてもらうようお願いしたと思うんだよねー。
そしたら少なくとも、脱走は避けられたのではないか…とか。
♪kotobukiさん
ホント、やさしいだけじゃダメなんです。
担当したお客様で、離婚されている方がいます。
とても素敵でお似合いで、こんな風にお互いを
思いやれたら幸せだなぁ…と感じていたカップルが
結婚2年目で離婚してしまったのです。
めちゃめちゃショックでした。
詳しい理由はわかりませんが、
個人的に年賀状をやり取りしていたので
ご報告くださったんです。
…そう考えると、挙式済みの方に年賀状を出すのが
ちょっと怖いです(笑)
♪ひろ茶さん
おっしゃる通りです。
そのサインを見抜けなかったんです。
結婚って「結婚式しよう!」って決めた時は迷いがなくても
準備を進めていくうちに、色々なことが見えてきて
悩んだり迷ったりするもんですよ。
結婚式準備で「違うな。」って気づけたら、ラッキー。
育った環境が違うんですから当たりまえ。
そして、それを一緒に乗り越えていこうと思える相手なら
結婚しても大丈夫だと思います。
「絶対無理!」なら、そこで立ち止まる勇気も必要なんだと
このふたりから学びました。
by JOHN (2007-06-29 03:02)
どうしようもないと言えばどうしようもないですね。
客観的に書いちゃいますけど、ドラマの鬼渡(見たことないけど)のような人情のすれ違い。
ホントなんて書いたらいいのか…JOHNさんの立場として、これ以上配慮してあげられることはなかったと思います。例えJOHNさんが途中で気付いて新郎様の意見を取り入れる努力をしたところでどうなったのか…。
お客様と直接関わる仕事してると、ホントに色んなコトがありますよね。以前に書いたかもですが家族会議で離婚阻止したことありました。あの時は…ワタシがカスガイになったわけではなく、莫大な違約金がカスガイになっただけのような気もするし…ウーン……。
たまたま当日その場所で起こってしまっただけで、たまたま近くにJOHNさんが居ただけだと、そう思うしかないと思います…。考えまとまらなくてスミマセン。
by nal (2007-06-29 12:57)
♪nalさん
ありがとうございます。
どうしようもないんですよ、ほんとに。
心の中はやっぱり本人にしか分からないことですしね。
ふたりとご家族がそれぞれ幸せでいらっしゃることを祈るしかできません。
by JOHN (2007-07-11 13:26)